フィクションを否定する01

面白い記事がYAHOOニュースにありました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/0bc25b4167e8647d7c5a90427189cba6b4635b12

上記サイトより 引用:
「最初の6か月は契約社員で、問題なければ正社員にしよう」。採用の失敗を避けたい経営者がよく使う方法です。有期契約なら期間が来れば雇用契約を終了できる——そう考える経営者は少なくありません。ところが、その期間を設けた目的が「本人の適性を見るため」だった場合、契約書に期間が書いてあっても、それは契約期間ではなく試用期間だと判断されることがあります。有期雇用と試用期間の危険な関係性について、企業の労務支援に強い社労士の桐生由紀氏が解説します。
※本記事に登場する人物および企業はすべて仮名であり、事例はフィクションです。

※本記事に登場する人物および企業はすべて仮名であり、事例はフィクションです。
は初めて見ました。

※プライバシー保護のため、社名や人物名はすべて仮名にしています
という記事は見たことはありますが。

フィクションだと言っても、
その架空の事実関係から導く法的評価まで、
現実の法令や判例から離れてよいということにはならないはずです。

フィクションを書くこと自体を問題にしているのではありません。
しかし、事実に基づかない架空の事例を前提として、
現実の法令や判例から離れた法的評価を示すのであれば、
そもそもそのような法律解説を書く必要があるのでしょうか。

そしてそのフィクションからの帰結があまりにも法解釈として非現実的なんて
実務経験はどれくらいある社労士なのって思われると損しませんか?って心配しました。


このフィクションの事例の要約
背景と経緯:
 都内の介護用品会社を経営する高梨社長は、過去に正社員の採用で失敗した経験から、「最初の6か月間は契約社員(試用期間のようなもの)として様子を見、問題がなければ正社員にする」というシステムを導入し、この条件で41歳の川島さんが「有期労働契約書」に署名して入社しました。

トラブルの発生:
 6か月後、社長は川島さんの能力不足を理由に正社員への登用を見送り、期間満了による契約終了(雇い止め)を通告しました。しかし川島さんは「話が違う」と納得せず、退職から1か月後に代理人弁護士を通じて「解雇は無効である」という通知書を会社に送付しました。

問題の本質:
 社会保険労務士の解説によると、たとえ契約書に「有期契約」とあっても、その目的が「本人の適性を見るため(試用期間の代わり)」であった場合、法的には期間の定めがない契約の「試用期間」と判断される可能性があるというもの。


【管理人による反論】
形式を軽視する「判例の拡大解釈」の危うさ:
有期契約書の効力は「使用期間のようなもの」という発言だけでは否定されない

「最初の6か月は契約社員、問題がなければ正社員に」。
この採用手法を「実質的な試用期間だから雇い止めは無効」と一蹴する社労士の解説は、
契約の本質である「書面の合意」を軽視し、
過去の最高裁判例を都合よく拡大解釈した極論と言わざるを得ない。
(本ニュースでは「契約書に期間が書いてあっても、それは契約期間ではなく試用期間だと判断されることがあります。」と 断定表現はしていないが。)



第一に、労働契約における最重要の拠り所は、
労使双方が合意して署名捺印した「雇用契約書(有期労働契約書)」の記載文言
である。

本事例において、川島氏(41歳)は「有期労働契約書」という明確な表題の書類に自ら署名している。民法や労働法の原則に照らせば、
この時点で双方は「6か月間で一度契約が終了する可能性がある」という条件を明確に認識し、
合意していることは間違いない。

それにもかかわらず、面接時の「試用期間のようなもの」という
口頭のニュアンスだけを捉えて契約書の法的効力を全面的に否定する論調は、
私的自治の原則や契約の厳格性を揺るがす危険な法解釈である。


第二に、この記事が前提としているであろう最高裁判例(神戸弘陵学園事件など)の
「ミスリード」という側面。

判例において
有期契約が「実質的な試用期間(解約権留保付労働契約)」とみなされたケースの多くは、
学校の教員採用など、
客観的に見て「最初から長期雇用(正社員)を前提とした選考プロセス」の一環として有期契約が組み込まれていたような特殊な背景がある。

しかし、一般的な中小企業において
「能力や適性を見極めてから、改めて正社員登用するかどうかを判断し、
会社側の希望する要件を満たしている場合に正社員転換を提案する」
というステップを踏むことは、
採用リスクを回避するための正当な防衛策である。

これをすべて「解雇権濫用法理が適用される試用期間」と同一視してしまえば、
企業は有期契約という制度自体を活用しずらくなる。



第三に、今回のケースは「能力不足による不当解雇」ではなく、
「正社員登用の基準に達しなかったことによる契約満了」である。

契約期間中に解雇したわけではなく、
約束された6か月の雇用と給与(月給28万円)は完全に履行されている。

社長が「期待していた水準には届かなかった」と説明している通り、
登用基準を満たさなかった以上、契約を更新しないのは当然の権利だ。

これを「不当解雇」と煽るような風潮は、
労働者側の過剰な権利主張を助長し、企業の採用意欲を著しく減退させるだけだ。

法の趣旨は労働者の保護にあるが、
それは「明文化された契約をいつでも破棄してよい」という意味ではない。

形式としての有期契約を正当に結んだ以上、
その期間満了に伴う終了は原則として有効であるべきであり、
メディアや専門家は、
判例を極端に一般化して企業の正当な採用活動を萎縮させるべきではない。

と 管理人も偉そうに フィクションに対して 反論してみました。


※ 神戸弘陵学園事件(最高裁平成2年6月5日第三小法廷判決)の検討:
                    判決文の概略は上記にリンクを貼っています。

1. 最高裁が示した「原則」と「例外」の判断基準

最高裁は、契約の目的が「適性判断」である場合、期間の定めがあってもそれは原則として試用期間であると解し、期間満了による当然終了の明確な合意等の特段の事情がない限り有期契約とは認められないとしました。裁判所は契約書の名称よりも目的を重視し、お試し目的であれば解雇権濫用法理が適用されると判断しました。

2. 有期契約と認められなかった理由

契約書に有期契約の記載や署名があっても、最高裁が「明確な合意があったとは言えない」と判断した背景には、以下の実態の矛盾があったためです。

 ・口頭での期待付与:
  理事長が面接時に長期雇用を期待させる発言をしていたこと。

 ・文言と実態の不一致:
  臨時採用の必要性を記載しながら、実際は生徒数が増加する新設校であったこと。

 ・規定の未整備:
  契約時に遵守すべき勤務規定が存在していなかったこと。


最高裁はこれらの総合的な事実から、
労働者が期間満了による当然終了に明確に合意していたとは認められないと結論づけました。


つまり、このThe Gold Online の記事のように
口頭で 使用期間のようなもの という発言があっただけで
あたかも 有期雇用契約ではない と短絡的に判断されたものでは全くありません。


この記事を書いたことになっている社労士が本当にこの記事書いたのでしょうか?
記事を書いた後に 誰かに編集されてしまったのか?
ちょっと気になってしまってます。
社労士さん頑張れ。